Drop. ページ21
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隆二さんのマンションを出て家に戻る途中だった。
“お前どこ今”
ボスからの電話。
背筋が嫌に伸びた。
「自宅の近くです」
“すぐ事務所来い!”
「………はい」と返事をした時には電話は切られていた。
私は踵を返して駅に向かった。
転がるように改札を抜けて電車に乗り込んで、何故こんなに空いているのかと思う。
「あ……」
仕事納めだ。
私もそうだったはずなのに、呼び出された。
呼び出されたと言うことは当然、事務所にボスが居て……
何百回も見た車窓からの景色が震えて見える。
私が、何か、やらかしたんだ。
事務所に着いて、取り敢えず深呼吸した。
「ちょっと、奥」
ボスが私を手招きしたついでにちらっと服を見た気がした。
大人なら勘づくだろう。
どこかに泊まってきたのだと。
「失礼します」
「昨日、やんなきゃいけないことあったんじゃないの?」
ボスはいつもみたいに「座って」とは言わなかった。
「ファックスですか?」
「違う」
「……すみません、分かりません」
落とした視線の先、テーブルに置かれた書類を見て私は息をするのも忘れてしまった。
「締め切り。昨日だったんじゃないの?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年2月6日 21時