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「私が知ってるのとは違う」
「何?」
「せいぜい増えても減っても2、3人で、そんな……よく分からない女の人が急に来たりしないし」
「お前さぁ!」
「どうして私のことは庇ってくれないの?私が悪いの?見られて嫌だったね、とか言ってくれても良いでしょ?」
この日がイブじゃなかったら、私はこんなに怒らなかった、仕事終わりじゃなかったらスケッチブックなんか持ってこなかったかも。
「隆二さんには、隆二さんの大切なものがあって大事なものがあって、よく分かります私。でも私にもあるんです。分かってほしいとは言わないけど………」
彼が何も羽織ってないことに気が付いて、私はストールを外して手渡した。
「隆二さんの普通と私の普通。ちょっと違うのかも」
「………今更そんなこと言うなよ」
この気温みたいに冷たいことを言っていると自分でも分かっている。
人は変わる、同じで居ることなんてない。
よく分かってるのに。
「クリスマスプレゼントじゃないけど……描き終わったやつだからあげますこれ。私の大事なやつ」
スケッチブックを無理矢理握らせて、私は停まっていたタクシーに乗り込んだ。
───首もとが、ひんやりした夜だった。
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「どーん!思い出の領収書!」
カウンターに小さな紙切れを叩きつけた。
「14630円!?何!?タクシー代!?」
「喧嘩の現場からうちまで。すげー、たっけー」
「何でわざわざ領収書もらってきたの?請求すんの?」
「………請求しよかな」
世間が早くもクリスマスを忘れようとしている12月25日の23時45分。
隆二さんは、あのスケッチブックを見ただろうか。
携帯落としたら怖いから………そんな理由で写真を撮ることが出来ない私が、代わりに描いたもの。
隆二さんの綺麗な手
考え事をしている顔
笑った顔
身に付けている小物
そして、寝顔。
大事なものに触れられたくなかった私の気持ちを見ただろうか。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年2月6日 21時