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もう一度、母のところに寄ると言う私を姉が病院まで送ってくれた。
「はるちゃん、良いんじゃないの?アパレル」
長い長い坂を登りながら、姉と二人で話すのも久しぶり。
「賛成してあげたいんだけどね……。あの子、お給料いっぱい貰いたーい!みたいなとこがあるから……働くってどういうことか分かってない」
「まだ高2だもん」
「そうだけど………Aちゃんみたいに待遇が良さそうな仕事したーい!とか言うから叱ったのよ私」
「えぇ?」
「Aは確かに良い暮らししてるかもしれないけど、目から血流しながら受験勉強してた!って」
確かに、それに近いものがあったなと私は声を出して笑った。
「優遇される人間は一部の天才とコネを除いて、死ぬほど努力した人たちなのよって。多分、分かってないけどね」
姉が首を捻りながら少し笑う。
「あ、ねぇ。上履き事件覚えてる?」
「私が自分で買っちゃったやつでしょ?」
「あれねぇ、お母さん落ち込んでたの。私たちに甘えさせる土台がないんだって。でも今思うと違うよね」
「ん?」
「Aは、自分で出来ることは自分でやろうとしただけなんだよね………ねぇ、東京の大学選んだの、この街から出るためだったんじゃない?」
「…そう……だったかなぁ?」
「合格通知見たときにね、あぁこの子はもうこの街に帰ってこないんだなぁって思った………やだー泣けて来ちゃった」
「泣かないでよー!私ちょくちょく帰ってきてるじゃん!」
「……そうだね。うん」
思い出が詰まりすぎてる街を出たかったのは、本当かもしれない。
「彼氏は?出来た?あれから」
「あ、うん。出来た…」
「表情が柔らかくなったもんね」
「本当?」
「………彼氏に早く会いたいから日帰りじゃないよね!?」
「違う!!」
“私は明日も来るから”と言う姉とは病院の玄関先で別れた。
夜の病院。
ヒールの音が響かないように、私はそーっと歩いて病室に入った。
「お母さん」
カーテンを開けたら、今度は編み物をしていた母。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時