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“何で臣くん!?”
“なんとなく”
引率の先生は“なんとなく”で写真を撮られてしまったらしい。
「この辺りで宜しいでしょうか?」
「あ、はい。ありがとうございます」
ニヤニヤした口元を引き締めて、私は実家のマンションへ入った。
鍵を開けて部屋に入って“あ、実家の匂いだ”と思う。
荷物を置いて、開けたままになっている和室の奥へと進んでマッチを手に取った。
お線香に火をつけて、まだ燃えているマッチを持っている左手を軽く振る。
「ただいま」
手を合わせるのは養父の遺影。
高3の夏だった。
私立から国立へと進路を変えた理由。
どうにかなると母は言ったし、父は確かにきちんとした貯えを残してくれていたけど
それは母のこれからの人生のために取っておくべきだと私は考えた。
あの頃の方が大人だったかなぁ………。
「よしっ。病院行ってきます」
実家から病院まで歩いて10分。
あ!中華屋さん潰れた!とか、またパン屋出来てる!とか
キョロキョロしているうちにあっと言う間に着いてしまう。
「302………302……あった」
病室が大部屋なことに私は安堵の溜め息をもらした。
扉をノックしてガラッと開けたら、四つあるベッドのうち二つは空いていて、残り二つにカーテンがかかっている。
私はもう一度廊下のネームプレートで母のベッドの位置を確認。
「左……」
指差し確認してから「お母さん?」と声を掛けた。
「A?」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時