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私は知らず知らずのうちに、彼の背中に手を回してシャツを握り締めていた。
「やだ?」
「………ムスッとしてて良いんですか?」
「え?うん、良いよ」
「そしたら“隆二が連れてきた奴、感じ悪いなぁ!”って………言われちゃいますよ」
「言われるかなぁ?まぁ、でも言われたからって………俺がそうじゃないって分かってたら良くない?」
隆二さんが頬を離して私を見つめる。
「別に思う人にはそう思わせとけば良いんじゃないの?みんなに良い子だって思われたいのかな?」
私が踏み固めてきた土台がガタッと崩れた気がした。
私がムスッと出来るのは、例えそれによって不利になっても非難されても、その対象が自分だけだと分かっている時だった。
ちゃんとした人になりたかったんじゃなくて、ならなければいけない
しっかりと、ちゃんとしていないと“要らない”と言われるんじゃないか
甘ったれるなと叱られるんじゃないか
そう思ってた。
崩れた土台の下にはフワフワした柔らかいものがあった。
隆二さんだけじゃない。
育ててくれたお父さんもお母さんも、私を認めてくれていたのに
“大事にしてもらった”なんて口にしながら
私が勝手に不安がってた。
嫌われることを。
私が勉強出来ないと……何でも欲しがったら……ちょっとでも道を外れたら……
お父さんもお母さんも、みんなから“あんな子を引き取るからだ”って言われて、私を嫌いになると思ってた。
そんな思い込みに何の意味があるんだと、隆二さんが教えてくれている。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時