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at will. ページ27











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車でキスをして、隆二さんは私を先におろした。









車を停めた彼が戻ってくるまで、私は瞬きも忘れてエントランスの前に立っていた。









このまま“そんなん”されるんじゃないかと思うようなキスに思わず声が漏れて、恥ずかしかったな………









いつも左の上唇の辺りにチクチクと髭が当たる。









顔の角度の問題かな……。









「車にあった傘借りちゃったよ」









「ひっ………!!あ、どうぞ借りちゃって下さい」









「今ビビったよね?ひっ!って言ったよね?」









「ちょ、ちょっとボーッとしてて」









「あ、寝てないんだっけ?そっか」









いや、もう、眠気は関東平野を通り過ぎた辺りです。









「散らかってるよ?」









笑う隆二さんの後ろを私は黙って歩いた。









素敵なマンション……私の犬小屋とは違うなぁ。









「部屋、寒いかな」









エレベーターを降りて、部屋の前で隆二さんがセキュリティの番号を押し始めて私は顔を背けた。









「え、なに?」









「見ちゃダメかなって」









「え?」









「私が不法侵入したらどうするつもりですか?」









「大歓迎。はい、どうぞ」









「………お邪魔します」









靴を脱いで、揃えて………そんな単純な動作すら緊張する。









「適当に座って。やっぱ寒いね」









エアコンをつけた隆二さんがリビングから出て、足音が遠ざかるのを確認して









「ふぅー………ふぅー………」









大袈裟に深呼吸してみても動悸がおさまらない。









自分の家じゃないだけで、何でこんなに緊張するんだろ。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時

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