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「隆二さんの夢は?これからの」
「俺はねぇ────」
彼の口から語られる、彼の夢。
男の人がこんな風に自分の描く未来を楽しそうに話すのを初めて見た。
まるで、子供が夢を語るときみたいな無垢な表情。
私は持ち上げたグラスに口をつけることも忘れて、彼の夢の話しに聞き入った。
「何か………良い話し聞いちゃった」
「内緒ね」
「え?」
「誰にも言わないでよ」
「は、はい」
“内緒”の仕草をして照れ笑いする彼がとても可愛かった。
「あっ。明後日さぁ」
「明後日?」
その時、個室のドアをノックする音がした。
「え?何か頼んだっけ?」
「ううん………」
私たちは同じ方向に首を捻る。
「はい!」
隆二さんの返事に「入って良いの?」と声がした。
「岩ちゃんだ」
岩ちゃん!?
「呼んだんですか?」
「呼んでないけど………入れても良い?」
「あ、はい!」
席を立った隆二さんがドアを開けて、その肩越しに岩ちゃんが見えた。
「えっ!あ、二人で食ってたの!?ごめん。隆二さん一人かと思ってて………」
そう言って、今日は少しも赤くない顔で私に会釈した。
「何?どうしたの?」
席を勧めた隆二さんにも会釈して、岩ちゃんは椅子に座った。
「今日、ここで食べるって隆二さん言ってたから良かったら一緒にって思って………LINEしたんだけど」
「嘘!?ごめん。電源切ってた」
「はぁ!?何で電源切ってんだよー!!」
「えー?良いじゃん別に」と言った隆二さんが笑いながら私をチラッと見て、私はちょっと照れた。
「店員さんも誰かと来てるなら言ってくれたら良いのにさぁ」
気まずそうな岩ちゃんは私の顔を見てパンっと手を叩いた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時