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自宅に戻ったのは3時過ぎで、泥のような体を床に横たえた。
「疲れた…………」
少しでも目を閉じたら、そのまま寝てしまいそうで這うようにバスルームに移動して熱いシャワーを頭から浴びる。
あと3時間半でまた、事務所に行かなきゃいけない。
もう少し眠りたいな。
休みたい。
出来るなら、あの人の腕の中で。
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「おい!ごるぁぁ!!」
怒鳴り声で目を覚まして顔を上げたら目の前にボスが居た。
「は、何でしょう」
「仕事中に居眠りすんな!」
「すみません、全然寝てないのに朝から会社とか回って───」
「言い訳は要らないから、あっちでちょっと話ししよ」
俗に言う“社長室”
でも、豪華な応接セットもないし凶器になりそうなガラスの灰皿もない。
私はかなり怒られるんだろうと思って、目線は下に背中を丸めて気配を消しながらボスのあとを付いていった。
「そこ、座って」
「はい………」
この状況でも閉じそうな瞼を必死に持ち上げて、私はボスと向かい合う。
「是が非でもお前にやってほしいんだって」
目の前に出されたファイル。
「こないだ出品したのを見て気に入ったんだって。やる?」
ボスはいつでもこんな調子。
「こ、これ責任者が私ってことですよね?」
「うん。今やってる仕事もあるし出来ないなら断るよ?」
小さな、小さな雑貨屋。
頭の中にはもう、図面が浮かんでいる。
「やります」
「やれんの?」
「やります」
「はい!じゃあ、返事しとくね」
私の仕事を選んでくれた人がいる。
瞼が熱くなるほど、嬉しかった。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時