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10日ぶりに感じる花の香り。
初めて見下ろした彼の顔。
薄く開いた彼の唇に、近づいて
「隆二さん」
「何?」
「…………トイレ行ってくる」
「はぁぁあぁぁあ!?」
「飲みすぎた!飲みすぎた!ウーロン茶飲みすぎた!」
「ふざけんなよー…………」
突っ伏してる彼に「ごめんなさい!」と言ってトイレに駆け込んだ。
────あのままチューしてたらどうなってたんだろ。
そんなことを考えながら洗った手を首筋に当てて、通路を歩いている時、前から岩ちゃんが来た。
「絶対人違いじゃないですよー!!」
すれ違いざまに叫ばれて、私は体を揺らす。
「あの、本当にお会いしたことないですよ」
「うっそー…………だって」
岩ちゃんは、私の通っていた大学の名前を口にした。
「でしょ?あってますよね?」
「あって………ます………」
「ほらぁ!」
いくらここ数年で風貌が変わったとは言え、彼を忘れたりするだろうか。
彼は私を覚えているのに。
「え?」
「あっ、すみません」
また、ジーっと見てしまった。
「いたいた!」
私たちは二人して声のした方を振り返った。
「何をウロウロしてんだよー!」
あ、見たことある人たちだ。
でも、名前、分かんないや。
「行くよー岩ちゃーん」
まるで“電車ごっこ”みたいにして列をなして私の前を通りすぎる岩ちゃんたち。
向けられる“誰?”の視線に冷やしたばかりの首筋がまた熱くなる。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時