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サロンを出てから喉の渇きを覚えて、チェーンのカフェに入った。
瞼が勝手に閉じそうになるほど酸っぱいレモネードを飲みながら、ツヤツヤっとしたグレージュになった爪をジーっと見る。
特に何も言ってないのに、薬指の爪にだけラインストーンが乗っている。
ネイリストさんの気まぐれか、サービスか…………彼氏出来ました的な浮かれた顔を私がしてたんだろうか。
思わず両手で頬を覆った。
隣のテーブルの女性たちが何かの話で盛り上がっていて
その“何か”が彼らの話であることに気づいた途端、私はまた居心地が悪くなった。
それでもレモネードは飲みきろうと思えたのは話の中心が“臣くん”だったから。
そうですよねー男前ですよねー、と心の中で相槌をうちながら店内の鏡に映る自分を見た。
臣くんがブランド名を口にした真っ青なパンプス。
ちゃんとした物を身に付けたいと思っている。
それは、ちゃんとした人になりたいと思っているから。
でも、ちゃんとした人って………何だろ。
トレイを持って立ち上がったらその上に置いておいた携帯が光った。
慌ててグラスを返却してお店から出て“応答”をタップする。
「もしもし」
私の声は弾んでいたに違いない。
“これから予定ある?”
耳に届く、彼の声。
「ないです。全然」
“ほんと?じゃあ今から住所送るから、おいでよ”
「……………それって、また人が」
“待ってるからー!”
一方的に切られた電話。
「………………どうしよ」
隆二さんには会いたいけど、人がいっぱい居たら嫌だな………。
臣くんが10人くらい居てくれたら良いのに。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時