Bravado. ページ1
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美意識は爪に出る、と言う。
私の場合は単純に爪が割れやすいから、サロンに通ってる。
「こんにちは!お久しぶりですね」
「来たいなーと思ってたんですけど、なかなか時間がとれなくて」
5年ほどお世話になっている担当の女性と微笑みを交わす。
腰をおろしたソファは脚が勝手に上がるほどフカフカ。
爪の長さを整えてもらいながら、隆二さんのことを考えた。
“寒いから一緒に寝ようね”と言ったくせに、半袖で寝ようとした彼が可笑しかったなぁ。
“寒くないんですか?”と聞いたら私のワンピースタイプの黒いルームウェアを指差して
“そっちこそ。頭に赤いリボン付けたらどっかの魔女じゃん”と笑っていた。
どっかの魔女にしては歳がいきすぎてるけど………。
それから、抱き締められるとやっぱり何か花のような香りがして、思わず胸に鼻先をくっつけた。
“オレンジだっけ?何か柑橘系の花の名前が付いた香水”
そう言いながら私の背中を撫でた彼。
もうすぐ11月も終わりそうなのに、彼の香りは夏を思い出させた。
その香りをもう10日ほど感じていない。
素人の私でも分かる、これから先彼らは忙しいのだと。
そんなときに急に会いたいなんて、やっぱりワガママだったかな………。
「今日もワンカラーで良いですか?」
「はい、お願いします」
「あ!こないだ教えてもらったサンローランのハイライト!買ったんですよ!」
「どうでした!?」
「私の法令線を消しましたよ、やつは」
「しかもあれ、ファンデーションの上から使えるじゃないですか!」
「そー!それ!」
女も30の足音が聞こえてくると、アイメイクよりベースメイクに熱が入る。
土台が大事なのだ。
外見も内面も。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月26日 20時