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私たちはお互いお薦めのCDを紹介しあったり、誰のどのライブに行ったとか時間を忘れて盛り上がった。









「アレは行きました?去年の」









そのとき、店内に閉店の音楽が流れ出して









二人して何故か笑いが止まらなくなった。









「出ましょうか」









「そうですね。あ、待って。これお金払わないと」









レジで会計をして店を出て、彼が“こっちの道?”と言いたげに右を指差した。









頷いた私に彼は「俺も」と笑う。









一人称が「自分」から「俺」になったことに私の胸はドキッとする。









「家、この辺ですか?」









私がさっきした質問のお返しみたいだなぁ。









「はい、私の家はあそこ!って言えるほど高くないんですけどね。でも本当、すぐそこ」









「へぇー」









交差点に差し掛かって、赤信号に歩みを止めた。









「あの…………」









ふいに、言わなくてはいけないと思った。









「私、業界の人間じゃないんです。普通の会社員で…………友達がそうなんです。音楽関係で」









恐る恐る見上げた彼の目元が険しくて、私は目をそらす。









「あの日は……あの日だけじゃないんですけど、コネで関係者席で観てて………それに、私CD持ってます…………ファンってやつです」









信号が青に変わって、車が次々停まっていく。









「えー!!そうなの!?」









「えっ」









「仕事関係の人だと思ってたからちょっと構えてたのに」









声を上げて笑う姿を見て、私は呆気にとられていた。









ファンだと打ち明けたのに。









私がすっごい変なファンだったり、速攻でみんなにバラすような奴だったらどうするんだろ。









「じゃあ、誘っても大丈夫かな…………今度、イベントがあって。音楽好きなら絶対楽しめるやつ」









「イベント?」









「うん。あ、俺らが出演するわけじゃないよ?俺らもお客さん………来る?」









「あの、私の話、聞いてくれてました?」








「聞いてた聞いてた。ちゃんと分かって誘ってる」









どういう、ことだろ。











「えっとね、場所が」









「急にタメ口」









思わず言ってしまった。









「へ?あ、ダメ?」









「ううん、思っただけです」

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時

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