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「これ見て気付いたんだけど俺とタメなんだね」
「あ………はい。そっか生年月日……」
「出身地のわりに標準語だよね」
「山下さんもオフィシャルな場だと標準語じゃないですか?」
「あぁ、そっか」
隆二さんは私の仕事の話を面白そうに聞いてくれた。
それは懐かしさも手伝ってのことだったと思うけど、興味を示してもらえたのがとても嬉しかった。
長い時間たくさん話して、お店の中がガランとしだした頃、そろそろ出る?って雰囲気になって立ち上がろうとした時
「婚約中?」
急に聞かれて私は中腰のまま固まってしまった。
「え?婚約中?私が?」
「右手の薬指に指輪してるから」
「…………あ、あぁ!これは母の形見です」
「あ、そうなんだ」
隆二さんが“嫌なこと聞いちゃったかな”って顔をした。
「私、彼氏いないって言いませんでしたっけ?」
気にしてませんよ、の意味を込めて私は笑って見せる。
「聞いたけどそれ2月の話だからね!?」
「そっかぁ!そうでしたね」
8ヶ月前、私はここから一人で帰ったんだった。
通路を歩いているとき、別の個室から女の子の甲高い笑い声と「孤独だわー!私!」と言う台詞が聞こえてきて、やけに耳についた。
「私も払います!」
「良いし」
レジでちょっと揉めて結局隆二さんにご馳走してもらった。
「ごちそうさまでした」
「良いよー、俺が誘ったんだし」
財布をポケットにしまいながら隆二さんが「どうする?」と尋ねてきた。
「ど、どうする?」
「……………あ!違う!変な意味じゃないよ!?帰る方向一緒だから、どうする?って意味!別々に帰るか?ってこと」
「あ、えっと………どうしよかな……」
本当は迷ったりしてなかった。
一緒に帰りたいと思ってた。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時