色戀、召しませ。 (ページ21)

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私は席を立ってバッグを手にした。

「嫌なこと言っちゃって、ごめんなさい」

それは本心から出た言葉だった。

拗ねた心が苛立ちに変わったのは、寂しかったからに違いない。

今日は、私の誕生日。

今日という日は神様がくれたプレゼントだと思った。

大好きな音楽の話を、大好きな声の持ち主と、大好きな音がかかってる場所で思う存分語れる。

そんなプレゼントだと思った。

だけど、包装紙をビリビリ破ったら箱の中身はよく“分からない”物ばかり。

「じゃあ………」

私たちは目も合わさず別れた。

帰りの車の中で、どうせもう会わないし痛くてやばいファンになってやろうと思った。

彼という人を近くに感じて声だけじゃなくて、外身も好きだと思ったついでにやばいファンになってやろう。

誕生日、私はほっとかれたんじゃなくてウザったい位に彼にまとわり付かれた………

早速、痛いファンになりきって、そんな妄想をしながら窓の外の景色をジーっと見つめた。

目に映るこの大きな橋を渡りきったとこにある灰皿の前で、私は去年別れ話をした。

その時、もう二度と自分から恋の穴に落ちたりしないと決めたんだ。

だからもう、隆二さんには会わない。

恋しないために。

もう、会わない。