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絶対に洋画に出てくるみたいな、変な色のライトに照らされた場所だと思ってたけど









どこにでもあるような普通のクラブの風景が広がっていて私はちょっとホッとする。









でも、この多種多様な香水が入り交じった匂いに鼻血が出そう。









「迷わなかった?」









周りの煩さに、隆二さんは自然と私の耳元に唇を寄せる形になる。









うん、と頷いてみせた私にあのDJは誰でその隣は誰で………









隆二さんは丁寧に説明してくれたけど、よく分からなかった。








「そこ、座ってて」









脚の長いスツールを指差されて、私はグイッとよじ登るようにそこに座って暫く音に耳を傾けた。









それは随分懐かしい曲だった。









あぁこんな風にもなるんだなと、楽しむより感心してしまう。









すっと私の前に戻ってきた隆二さんは透明なグラスと、オレンジのグラスを手にしていた。









どっち?と聞くように二つのグラスを出されて、私はストローが入っているオレンジの方を選んだ。








今日は飲まない方が良い気がする…………何となく。









「風邪?」









スツールの高さに合わせたような小さなテーブルに、肘から先を預けた格好の隆二さんが私の耳元に尋ねる。









「なんで?」









「咳払いしてる」









耳から耳へと言葉を移しながら、彼の首筋から香る花のような匂いは何だろうと思う。









「あげる」









そう言って私の手を飴でつついた。









「ありがとうございます」









「あ、ちょっとごめんね」









私に背中を向けて去っていく後ろ姿を見ながら、飴を握り締めた。









一人ボーッと辺りを見渡しているうちに、普通のクラブの風景ではないことに、私は気づいた。









あの人、雑誌で見たことある………









一般人の人、手ぇ挙げてー!と言ったら私しか挙手しないんじゃないんだろうか。









血統書付きの犬の群れに雑種が放り込まれたみたい。

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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時

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