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“へぇー、珍しいね”
「そうですか？」
“うん。自分で貰いに行くの？灯油。重いよね？”
「あ、自分じゃなくて」
“彼氏とか？”
「彼氏居ないんで、配達してもらってます」
“そうなんだぁ”
「隆二さん大丈夫ですか？私と電話してて。彼女、怒りませんか？」
居るっぽいことネットで見ちゃったぞ。
“彼女、居ないけど”
ボッと音を立ててヒーターが点火した。
…………このヒーター、私の気持ちと同期してる？
「居ないんですか？何か意外だな………」
“意外？”
「うん、意外」
彼女が居るとか居ないとかじゃなくて
“彼女、居ないけど”って、その言い方がとっても普通で意外だった。
“ひょっとして飯まだ？”
「そう、今から作ろうかなって」
“あっ切るよ！ごめん、邪魔しちゃったね”
「ううん！楽しかった！」
口にして自分が恥ずかしくなった。
彼にとっては最終確認ついでの世間話なのに。
“じゃあ……もうちょっと喋ろっかな”
「……………うん」
私は携帯を左右に持ち変えながら、夜ご飯を作った。
電話で喋りながら料理するのは難しくて、私が「あっ」とか「熱っ」とか言う度に、隆二さんは“何！？”と笑ったり驚いたりしてた。
「出来ました！」
“おーじゃあ、今度こそ本当に切ろっかな”
「はい、あの、明後日楽しみにしてます」
“うん、俺も”
「はい…………じゃあ、明後日」
“うん、じゃあね。あ！ゆっくり食べてね。邪魔しないから”
「はい」
隆二さんは、最後まで私を笑わせてくれた。
長電話のせいか、耳がジンジン痛む。
「いただきます」
胸がいっぱいで、その日の夜ご飯は半分も食べられなかった。
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2016年1月4日 20時
