色戀、召しませ。 (ページ38)

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髪を乾かしたあと鏡の前に座って、自分の顔を10分見続ける。

今日の私の顔に足りないのは何だろ。

「……………締まり？」

表情が緩みっぱなし。

もう、これはどうしようもないよね…………。

服装選びも難航した。

そもそも、どこで何をするのかも分からない。

ひょっとしたら急に「アスレチックに行こう！」とか言われるかもしれない。

スカートを穿いていったら思いっきりターザンロープ出来ない。

あれ大好きなのに私。

「ジーンズ？」

でも格式高いレストランとか連れていかれたら「デニムのお客様はちょっと………」と言われるかもしれない。

ブローしたばかりの髪を振り乱しながらクローゼットを漁る私に隆二さんから待ち合わせ場所の連絡がきた。

「あれ………近い」

ついでに聞いてみた。

“何するんですか？”

“何だと思う？”

“分かりません。教えてください”

“ないしょ”

………………これ絶対アスレチックでしょ！

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結局、スカートは辞めといた。

“気合い入ってんなー”みたいに思われたら嫌で………。

待ち合わせ場所に、隆二さんは超変装スタイルで立っていた。

見る人が見たら、完全に“今市隆二”だけど。

私はちょっと意地悪したくなって彼の前をわざと通り過ぎた。

“あっ”って顔した彼を視界に捉えながら、そのまま真っ直ぐ歩いたらグッと二の腕を掴まれた。

「ちょっと」

隆二さんはマスクをずらして“俺、俺”と笑いながら自分を指差した。

この笑顔に、会いたかった。