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「女がウテウテとか言っちゃダメでしょ!」
「はい、ごめんなさい」
「……………でも、ウテウテだよね絶対」
「でしょー!?」
「私のウテウテセンサーが感知してるよ。あの…………誰だっけ?」
「臣くん」
「そんな名前だったっけ?まぁ良いや。臣くんを感知してる」
そう、私の中で彼はそういうキャラなのだ。
だから、女性にはグイグイ行ってフラれてもめげなくて………そんな想像をしながら「そろそろ出ようか」と秀香と席を立った。
半額券を提示して会計をして、二人でお店を出た。
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今でもはっきり覚えている。
その日は9月の第3週で、昼間は暑かったのに夜は急激に冷え込んだ日だった。
秀香が乗るはずの電車が止まっていて「うちに泊まってく?」と聞いたら「悪いからタクシー使うよ」と彼女は大通りで手を挙げた。
「近いけど気を付けて帰んなよ!」
タクシーに乗り込む秀香の言葉に私は手を振って応えて、家の方向に踵を返した。
2月からずっと避けていたあのコンビニに寄ってしまったのは、あまりに寒くて暖かい飲み物が欲しかったから。
コンビニに入る前、外から中の様子を伺った。
私の不審者っぽい行動に店員さんが怪訝な顔をしてこちらを見ている。
隆二さんが居ないのを確認して“ちゃんとした客ですよ!”と背筋を伸ばして自動ドアをくぐった。
4年ほど前から働いている店員さんは“あ、この人か”みたいな顔をして「いらっしゃいませー」と会釈してきた。
私はまた、雑誌を一冊手に取る。
最近、自分の料理に飽きてきた。
料理雑誌を見ながら何か美味しそうな物はないかなと、ページを捲っては首を傾げて二冊目に手を伸ばした時だった。
静かにそっと、私の隣に立った人が居た。
「久しぶり」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2016年1月4日 20時