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私は事務所を出て、エレベーターの前に立った。
後ろからA子が追い掛けてきて、隣に並んだ。
上がってきた箱に二人で乗って、一階について
外の空気に触れた瞬間、緊張の糸がプツッと切れた。
「A子…………」
「なに…………」
「…………ちょっと見てこれ!!私、手汗やばいから!!見て!!」
「どれ!?うぉぉ!めっちゃジューシー!!手がジューシーじゃん!!」
「ねぇ!!私すっげぇ嫌な女じゃなかった!?何かさ………嫌な女じゃなかった!?」
「うん!!もうね、すっげぇ嫌な女だった!!あら?この人どちら様?って思った!!」
「まじで!?もうさ、何言ったか覚えてないんだけどさ!!やっべ、手汗やっべ!!」
「あんた、キャラ変わってるから!!落ち着いて!大丈夫だから!嫌な女だったけど、胸がスーーってしたから!!」
「本当に!?大丈夫!?みんなさ、私のこと嫌な女だなぁって思ってないかな!?」
「思ってないから!!ほら!!」
A子が上を指差した。
見上げたら、窓からみんながこちらに向かって手を振っていた。
「みんな知ってるんだから………全部。早く言ってよ」
手を振り返す私に向かってA子が呟いた。
「ごめんね」
「じゃあ!お昼行こうよ!何する?」
「あれは?オムライス」
「あ!あれ美味しかったね。それにしよ」
普通とは、平凡とは、大人とは
意外と楽しい。
今なら立ち止まって、隆二さんを待てる気がする。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月27日 19時