4 side T ページ43
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夜遅く、真希から電話があった。
真希は俺からのメッセージを受け取ったあと、Aを迎えに行ってあのレストランで早めの夕食をとったと言う。
「どう?食べてた?」
“あんまり…………でもね、エスカルゴ!あれが出てきたときは笑ったの”
電話の向こうの真希も吹き出すように笑ってる。
「そう?何か恥ずかしいなぁ………今は?ホテル良い部屋でしょ?」
“良い部屋だけど、バスルームがガラス張りって女同士じゃ気まずいよ?”
あれ?そんな部屋だったっけな?と思い返す。
“A、さっきからずーっとシャワー浴びてる”
「ずっと?」
“うん。バスタブにお湯張ったんだけどなぁ………”
「ねぇ、大丈夫?………生きてる?」
“ちょっと…………恐いこと言わないでよー………こっそり様子見てこようかな”
「うん」
“電話繋いだままで良い?”
「う、うん」
ギャー!とか聞こえたらどうしよ。
“岩田さん………”
「どうした!?」
“泣いてる…………”
「え?」
“シャワーで音消して、泣いてる”
余計なことをしたかなと思った。
本当は、こういう日は一人でいたかったんじゃないかな。
真希は“一人で居たいような、寂しいような日はこれで良いんだよ。Aの為に、ありがとう岩田さん”と、言ってくれた。
誰かの気配を感じながら泣きたい気分ってことかな………。
難しいな。
.
.
昼頃帰ってきた真希は「A、吹っ切ったのかなぁ」と呟いた。
朝食はたくさん食べたし、ヨットハーバーを散歩しながら冗談を言って真希を笑わせたと言う。
「そっか………ねぇ、今日時間あるし夜は外で食べようよ」
「エスカルゴ?」
「もう良いよ!それは!」
どことなく浮かない表情の君にも、気分転換が必要だよ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月27日 19時