か弱き者。side T ページ40
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コーヒーを取りに行って…………何分かかってんだろ。
様子を見に行ったら、Aの周りに人だかりが出来ている。
「ちょっと、どうしたの?」
みんなの頭の間から覗いたら、Aの白い服が琥珀色に染まってた。
「Aちゃん、大丈夫だよ!水で洗っておいで」
あぁ、コーヒーかかっちゃったのか。
みんなが慌ててる原因は、彼女のカットソーがヴィンテージだったからだ。
特にスタイリストさんは、顔色が悪くなるくらい。
「A、手伝うよ。俺の撮影まで時間あるよね?」
もう、彼女の表情が“助けて”と言っている。
先に洗面所で待ってた俺のもとに、Tシャツに着替えた彼女がやってきた。
「メンズだから、大きくて」
笑いながら俺に手を広げて見せる。
「それはそれで、可愛いけどね」
彼女は、洗面ボウルにカットソーを入れて蛇口を捻った。
「シミ抜きの洗剤、貸してもらっちゃいました」
勢いよく流れる水、濡れていく白い服。
「シミにならないと良いなぁ」
「そうだね」
「………………もう、だめかも」
カットソーを洗いながら、彼女は泣き出した。
「ねぇ、A。何でもっと早く泣かないんだよ…………」
「ごめんなさい………」
手の甲で何度も涙を拭いながら、顔をくしゃくしゃにして子供みたいに泣いてる。
「謝らなくて良いんだよ」
「嫌なんです、仕事中に仕事以外のことで泣いて…………」
それでも涙を堪えようとしているのか、時おり咳き込むような嗚咽が聞こえる。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月27日 19時