2 side R ページ2
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アトリエは、ゴチャッとしてるイメージだけどAのこの部屋は全てが整然としている。
画集だったり資料集の類いは、背の順に棚に収まっていたし、腰高の机の上には画材がきちんと並べられていた。
少し神経質な彼女の性格と、もう長いこと絵は描いていないんだなということが分かる部屋。
「これ、見ても良い?」
「良いですよ」
一冊のクロッキー帳が目に留まった。
一枚目から何とも艶かしい絵。
「こういうの何て言うんだっけ?」
「ヌードクロッキー」
「あぁ、それだ」
男だったり、女だったりの裸体が紙の中で様々なポーズをしている。
パラパラめくっている手が思わず止まった。
「これ、お前?」
「よく分かりましたね!顔、ちゃんと描いてないのに」
「体で分かる」
彼女が体の線が出るような服を絶対に着ない理由を、解き明かすような
一次元の裸。
「どうやって自分を描くの?」
「鏡見ながら、こう………」
彼女は鉛筆とクロッキー帳を持つ仕草をした。
「へぇー」
部屋の中に大きな姿見があって、ここで描いてたのかなぁとちょっと想像したり。
「美大出て………うちの事務所?」
「絵で食べていこうなんて思ってませんでしたから、事務系の資格いっぱい取っといたんです」
「趣味でどっかに出展したりしないの?」
「あの………評価されるのが苦手なんです」
苦笑いした彼女。
「課題とか出すじゃないですか?何らかの評価を受けて返ってきた時に、がっかりしてる自分が嫌で」
「がっかり?」
「なんだ思ってたより低いな………とか。その“思ってた”部分は私の過信とか自惚れとか自己評価の高さなんだって、見せ付けられてる感じがして」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月27日 19時