検索窓
今日:16 hit、昨日:24 hit、合計:993,174 hit

2 side R ページ2





アトリエは、ゴチャッとしてるイメージだけどAのこの部屋は全てが整然としている。









画集だったり資料集の類いは、背の順に棚に収まっていたし、腰高の机の上には画材がきちんと並べられていた。









少し神経質な彼女の性格と、もう長いこと絵は描いていないんだなということが分かる部屋。









「これ、見ても良い?」









「良いですよ」









一冊のクロッキー帳が目に留まった。









一枚目から何とも艶かしい絵。









「こういうの何て言うんだっけ?」









「ヌードクロッキー」









「あぁ、それだ」








男だったり、女だったりの裸体が紙の中で様々なポーズをしている。









パラパラめくっている手が思わず止まった。








「これ、お前?」









「よく分かりましたね!顔、ちゃんと描いてないのに」









「体で分かる」








彼女が体の線が出るような服を絶対に着ない理由を、解き明かすような









一次元の裸。









「どうやって自分を描くの?」









「鏡見ながら、こう………」








彼女は鉛筆とクロッキー帳を持つ仕草をした。









「へぇー」







部屋の中に大きな姿見があって、ここで描いてたのかなぁとちょっと想像したり。








「美大出て………うちの事務所?」









「絵で食べていこうなんて思ってませんでしたから、事務系の資格いっぱい取っといたんです」









「趣味でどっかに出展したりしないの?」









「あの………評価されるのが苦手なんです」









苦笑いした彼女。









「課題とか出すじゃないですか?何らかの評価を受けて返ってきた時に、がっかりしてる自分が嫌で」









「がっかり?」









「なんだ思ってたより低いな………とか。その“思ってた”部分は私の過信とか自惚れとか自己評価の高さなんだって、見せ付けられてる感じがして」

3 side R→←招かざる客。(前)



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (395 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
972人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月27日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。