イカロスの鍵。 (ページ8)

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4 side T ページ8

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「大暴走してるよA」

真希は、髪をとかしながら俺の言葉に少し笑った。

「大暴走？」

「私のこと利用して下さい！って言ったらしいじゃん」

「へぇー、へへっ」

「友達が報われそうもない恋してんのに、よく笑えるね！」

「報われそうもない……」

「大体さぁ、何であんな夢中なの？隆二さん別に惚れさすようなことしてないでしょ」

カバンをぶつけた、申し訳ないから謝った。それだけじゃないの？

真希はモゾモゾとベッドに潜り込んできて目をパチパチとさせながら俺を見た。

「岩田さんは私のこと惚れさそうとしてた？」

「ううん」

「なのに、私は好きになった」

「でも俺たちは、普通に話したり飯食ったりしてたじゃん。あの二人、そもそも仲良くないし………隆二さん恋愛する気ないし」

「じゃあ、よーし！恋愛するぞー！って私のこと好きになった？」

「違うよ？………だから！俺らとあの二人は違うじゃん！」

隆二さんが言う「仕事が順調だから」は、納得の理由。

彼女や好きな人がいて、仕事がうまくいってるときはそうは思わないんだけど

全くフリーの時だと、恋愛のせいで仕事がうまくいかなくなったらどうしよって考えちゃう。

本当は、そんなことないんだろうけど。

「Aは、あんな感じでいっつも一生懸命なの好きな人には」

「一生懸命だし、良い子だけど隆二さんが振り向くとは」

隆二さんは、照れ隠しとかふざけて“困る”なんて言ったんじゃない。

それに、いきなりキスしたのも

“純粋そうだから、ショック受けて嫌いになったら良いなと思って”

そんな理由。

隆二さんは絶対に───

「振り向くよ」

自信たっぷりの笑顔で、真希はそう言った。

「え？」

「いや、追い掛ける」

「え！？」

「報われそうもないなんて、あり得ない」

「あり得ない！？どうしてそこまで言い切れんの？」

「じーっと見てたら分かるってば。おやすみなさい」

スタンドライトを消した彼女の隣、人の恋路が気になって寝付けない俺が居る。