イカロスの鍵。 (ページ45)

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夜風が心地よいと思うのは私の体温が上がったせい？

「でも、お前じゃなくても良い理由が見つからなかった」

「………そっ、それで？」

「…………それで……さっき、もう嫌いって言われた」

「……私のこと、どう思ってるんですか」

「好きだよ。でも、俺こういう感じだから」

「聞こえないんですけど！」

「…………好きだよ！」

「…………遅いんですよ！私、さっきので、ちょっと嫌いになったんですよ！どーしたら良いんですか！」

「………え？」

「………また好きにならせて下さい」

「でも…………俺、変われないんだよ。さっきまで居た岩ちゃんみたいに優しい王子様みたいになれない」

「今の隆二さんで良いです！その優しい王子様みたいじゃない隆二さんを好きになりたいんです」

「意地悪されて良いの？」

「他の男の人に優しくされるより隆二さんに意地悪される方が良いです」

彼は軽く笑った。

私と居て、初めて笑ってくれた。

「で、もう一回好きに………なってもらう？にはどうしたら良いわけ？」

「…………取り敢えず、ギュッてしてください」

「あ、え？」

「早く！！」

あんなに遠慮なく躊躇なくキスしてきた人が、恐る恐る私を抱き締めた。

ずっとこうしてほしかった。

彼の胸に甘えたかった。

「もっとギュッてしてください」

「こう？」

「もっと」

「痛くない？」

「全然。あったかいです」

隆二さんの熱いのと冷たいのしか私は知らなかったから。

「これで好きになった？」

「………なってません」

「えー…………」

「だって、ちょっと嫌いになっちゃったんで。そんなすぐには………」

“ちょっと”以外は、全部好き。

でも、今は言わないでおこう。

ギュッとして、って言って抱き締めてほしいから。