イカロスの鍵。 (ページ31)

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「本当に………他の人にはしてないんですか」

「してないって」

縮まっていく、二人の距離。

何だか………ガムを万引きした私を隆二さんが咎めてるみたいな格好だな。

「他の人に誘われたら遊びに行っちゃうんじゃないですか？」

「行かないよ」

「綺麗な人が居たら、隆二さんから誘って食事行っちゃったりするんじゃないですか？」

「わざわざ予定聞いて店探して？何でそんな面倒臭いことしなきゃなんないの？」

「本当に、他の人をからかったり誘ったりしてないんですか」

「してないって」

「絶対？」

「絶対」

「何で………私には……するんですか？」

「だって利用して良いんでしょ？」

だんだん彼の顔が近付いてくる。

「え？まだ続けるんですか？」

「きれいなうちに引いとく？」

掴んでいた手首を急に離されて、カラカラっとボトルの中でガムが跳ねる音がした。

「引いとくかー。俺、恋愛する気ないから利用されて終わりだもん、お前。嫌でしょ？」

そう言いながら、彼は私の耳に触れた。

キスでも飴でもなくて、指先で触れられてるだけなのに脊髄まで震えが来る。

「俺がしたい時に、したい事されるの嫌でしょ」

「もう、何が良くて何が嫌なのか分からなくなってきました……」

「…………困ったね」