イカロスの鍵。 (ページ6)

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「あっ、あの！」

「………なっ、何ですか」

「私、隆二さんのこと好きです。隆二さんにその気がないのもよく分かりました」

「うん」

「だからって、そんなため息つくほど迷惑ですか私」

1階についたエレベーターの扉が人一人分くらい開いた瞬間に、彼は体を斜めにして二人の空間から出ていった。

…………無視！？

“迷惑だからやめて”

彼の口から言われたら………言われたら……

諦められるかもしれない。

あんな風に体の中から熱くなるように火が着いたのは初めてで。

真冬の朝のストーブみたいに、中々そこから離れられない

そんな恋の落ち方をしてしまったから、はいそうですかとは諦められない。

早足の彼の後ろを私は小走りで追い掛ける。

「なぁ」

ピタリと足を止めた彼が、私の方を振り向いた。

二人の距離、8m弱。

「岩ちゃんから聞かなかったの？」

「聞きましたけど……だから、そんなため息つくほど」

「嫌なことあったら、ため息つかない？」

「嫌なこと………あったんですか？」

「あったよ」

「それ、私に教えてくれませんか」

「何のために？」

「言ったらすっきりするかもしれないじゃないですか！」

「は？」

「愚痴くらい聞きます！利用して下さい！私のこと」

「何言ってんの？利用って………それに、悩み相談から恋には発展しないよ？俺は」

「発展しなくても良いです！」

道端で、大声で、本当に何を言ってんだ私は。

「………はぁ？」

「どんな理由でも、少しでも傍に居たいんです。私の胸の中、隆二さんでいっぱいなんです」

汲み出すポンプが欲しいくらい。