イカロスの鍵。 (ページ41)

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首を横に振った彼女。

どこか不安気。

運転手は、会釈して前を向いてハンドルを握る。

「ねぇ」

彼女を見上げた。

「ちょっと………」

そう言って手招きした。

「もうちょっと……」

不安気な表情のまま、彼女は少しずつ俺に近付いてくる。

「もうちょっとだけ……」

最後の一声のあと、俺は彼女のカーディガンをギュッと掴んで引っ張り寄せて

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.

.

キスをした。

数秒だけ唇を重ねたあと、数ミリだけその唇を離して

「こういう男だからね」

と彼女にだけ聞こえる声でそう言った。

11文字を話す間、何度か彼女と唇と俺の唇が触れあった。

キスは終わってたはずなのに、話せば唇がぶつかるほどの距離。

そんな距離で、そんなことを言われて呆然とする彼女を置いて

空車を賃走に変えたタクシーがドアを閉めた。

「仕事、楽しいし順調だから恋愛とかはあんまり……」

俺が言ったのは、先週。

恋愛しないのは、そういう理由もあるけど、

世間で言う“優しい”扱いなんて出来ない。

強引で独占欲が強くて………

そんな扱いしか出来ない。

純粋そうな君は、いつか嫌になる。

俺を嫌いになる。

繋がりが出来てしまう前に嫌ってほしい。

“この人、いきなりこんなことするんだ”

“最低”

お願い、そう思って。

大事な思い出を作ったあとで、君を失うのは辛すぎる。