イカロスの鍵。 (ページ37)

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一人、椅子に座ったままの俺は、みんなの顔を見渡した。

天を仰いだ真希。

状況が読めてない女。

瞬き一つしない隆二さん。

ぼんやりした目で隆二さんと女を見てるA。

「ごめん、隆二さん。誰？その人」

俺以外に誰が聞くんだ。

「あんまりじゃない？Aはさぁ、隆二さんのことが好きで」

「もう好きじゃなくなりました」

みんなが一斉にAを見た。

Aは椅子の横に置いてあったバッグを持って、ナプキンで一度唇を拭った。

「さようなら」

その一言は誰に向けられたものなのか。

真っ直ぐ出口に向かう彼女。

ハッと我に返ったように追いかけようとした隆二さんの手を真希が掴んで止めた。

「私の大事な友達、泣かせないでください」

追いかけたら、Aは泣くの？

ほっとかれたら寂しくない？

男には分からないこと？

「どうぞ」

真希は隆二さんの隣で唖然としている女に椅子を勧めた。

「今市さんも」

さっきまでAが座ってた椅子に隆二さんは腰を降ろした。

知らない人が見たら、仲の良い二組のカップルに見えるかな。

見えるわけない。

頭を抱えた男が、俺の目の前に居るんだから。