4 ページ16
・
方向音痴で地図の読めない私が、隆二さんから送られてきた住所を頼りに、お店の近くの路地まで来た。
文明の力を駆使しまくって。
「この辺かなぁ………」
「遅い」
後ろから声をかけられて慌てて振り返った。
「あれ!隆二さん!」
「さっき俺の前通りすぎたでしょ」
「すみません、よく見えなくて」
彼は腕を組んで私を見ている。
「メシ………ですよね?」
「ここ、二人からじゃないと予約出来ないんだよ」
“ここ”と指差した場所は
「おっ、おすし!」
「おっ、おすしだけど?行こ」
「はい」
店内に入った瞬間から鼻先を何とも言えない匂いがくすぐる。
「こんばんはー」
「あ!こんばんは!どうぞ」
何だか常連さんの匂いもする。
いつもそこが指定席なのかカウンターの端っこに彼は座った。
特に椅子を引いてくれるとか、勧めてくれるとかもなかったので、私は隣に勝手に座った。
「何が良い?頼みな」
「あ、はい。えっと玉子」
彼は壁に飾ってある日本画をずっと見てる。
デリバリーの次は、数合わせ?
“会計別にしてください”と言われかねない。
「あの、誘う人いっぱい居たと思うんですけど………」
「この時間に腹減ってる奴居ないよねー。片っ端から連絡して最後がお前ね」
「あ………そうですか」
空腹を満たすための最終手段って感じか………。
1342人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月2日 19時