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私の気管支から変な音が聞こえ始めた頃、やっと部屋の前まで辿り着いた。
ソーダ味のアイス一本じゃ、割りに合わないよこれ。
「バッグの中、見ますよ?鍵出しますよ?」
「うん」
応答あり。
「あった」
鍵を開けて一先ず玄関に座らせてみた。
「じゃあ、私帰りますね。そこで寝ないで下さいよ?」
「……ソファまでお願いします」
あれ、謙虚ですね。
「分かりました」
もう一度、肩を貸して立ち上がらせる。
「部屋の照明のスイッチどこですか?!」
「どこでしょう」
「……もう良いです」
玄関からの灯りを頼りにソファまで歩いて、あと一歩で到着する寸前
「……いっつもそんな顔してたっけ?」
がっつり肩を組まれた状態の私の顔を今市さんが覗きこむ。
「はい、こんな感じだと思います」
「………いい?」
彼はソファに視線を移した。
「あ、すみません早く寝たいですよね!どうぞ」
「うん」
腕が引っこ抜かれるんじゃないかと思う位、強い力で引っ張られて
背中がビリっとする位の勢いで倒されて
「いい?」
囁かれたら最後。
衣擦れの音。
暗闇をかき回して白を垂らせば、グルグル渦を巻いていずれ溶け込む。
溶け込んだあとの褐色が彼の肌の色と重なって、思わず目を閉じたら
あの言葉が甦った。
“好きなんだね”
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我々は理性によってのみではなく 心によって真実を知る。───パスカル
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年7月14日 17時