忘。 ページ36
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私は、もう一度、名刺の人に会うことにした。
謝罪もあったけど………
「と言うことで、私より先輩と二人きりで一度お会いされることを強くお勧めします!」
この人には太陽みたいな先輩が似合う。
お店を出て、今市さんが待つ数軒先のカフェに入ったら彼は小さく手を振った。
「どうだった?」
「私、先輩が出馬したら当選させる自信あります」
「うまくいきそう?」
「んー、でもあの人、愛想はないけど一途だと思います。そういう所が先輩に合うかなって」
「へぇー、そんなことまで分かる?」
「分かりますよ。前とんでもないのと付き合ってたことがあるんで、とんでもない人の匂いは分かります」
今市さんは詳しく聞こうとはしなかった。
つつかれたくない部分があるのは、大人だからお互い様。
「今市さん」
「何?」
「今日暑いですね」
「すっげぇ暑いね」
お天気の話で笑わせてくれるのは、彼だけ。
恋人としての彼がどうなのかは、まだ分からない部分も多いけど
好きじゃなくなったら、素直にその理由を伝えて別れる人なんじゃないかと思う。
間違っても、気付かれないように少しずつ他の女性に愛情を移しておきながら
空っぽの心で私の上に乗るような、そういう狡くて、とんでもない事はしないだろう。
.
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と、いう希望的観測。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年7月14日 17時