想。 ページ32
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初対面の男の人の前で酔う。
これは、あってはならない失態。
明日、先輩に殴られるかもしれないとまだ酔っ払ってる頭でも想像出来る。
駅から自宅まで、醒ます筈で歩いたのに酔いは回るばかり。
だから私は、部屋の前のしゃがみこんだ人影に躊躇なく近付けたのかもしれない。
「あれー、今市さん、キャップにフード被ってこんな時間に……通報されちゃいますよ？」
暫しの沈黙。
「あ！資料ですか？事務所にしかないんですよねー」
「あの電話なに？“好きでした”って過去形。気になるんだけど」
「………気にしてて下さい」
彼は急に立ち上がったかと思ったら、
私を抱き締めた。
「勘弁してよ………」
掠れた声が待ちぼうけの長さを語る。
真正面から、こんな風に彼に抱き締められたのは初めてで一瞬何が起こったか分からなかった。
「A」
「はい」
「好きだよ」
本当に、この人は……私を泣かせてばかり。
「もう遅い？」
「だいぶ……遅いです」
「ごめん」
でも、あんなに辛そうな顔初めて見たので許します。
「あの電話………焦ったー……」
焦ったとこ、見てみたかった。
「……素敵な男性だっけ？会ってたんでしょ」
「会ってましたよ」
「……何もされてないよね？」
「……確めてみますか？」
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作者名：ぽち。
| 作成日時：2015年7月14日 17時
