切。 ページ28
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「例の件、今日はどう?」
先輩に言われてることが、よく分からない。
「例の件?」
「え、ちょっと。名刺の人と会ってくれるんじゃないの?」
「あ………」
完全に忘れてた。
私にとっての“例の件”は、1週間前に彼と言い合ってしまったこと。
心の底から聞かなきゃ良かったと思ってる。
私たちは、会話の続かない二人に戻ってた。
「ねぇ?今日で良いかな?」
「あ、はい。良いですよ。場所とかあとで教えて下さい」
「ありがとー!ついでにコレもお願いして良い?」
よりによってメンバー配布の資料。
「……分かりました」
労働という義務。
「これ、置いときますね」
臣さんの前にまとめて置いて、出来るだけ今市さんを見ずにそそくさと立ち去ろうとした私に、先輩が「ごめん」と追加の資料を持ってきた。
「あれー先輩、機嫌良いですねー」
臣さんは、多分何となく言ったんだろうけど
「Aがデートだから!」
「だ、誰とデート?」
岩田さん焦ってるし
「俺らが知ってる人だよね?」
臣さんやっぱ主犯格だし。
「知らない人だよ?」
先輩、言葉足らずだし。
「こういう仕事してると出会う機会ないんです。貴重なんです!ね?A」
ここの雰囲気、地獄だ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年7月14日 17時