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「どういうって……」
「何だったか聞くってさ……自分でもよく分かんないまま受け入れたってこと?」
「そんな、私だけが悪いみたいな言い方しないで下さい……」
「どっちが悪いって話?なら俺が悪いんじゃない?でもさ……あれは……こんなにお互い責め合わなきゃいけない事だったのかな」
眉をひそめて少しだけ俯いた彼は、ため息混じりに
「終電、逃すよ」
そう言って私の横を通りすぎた。
駅に急ぐ人の中、動けない私だけが浮いている。
私が何より恐れていたのは、彼との関係が変わることじゃなくて、気付いたら捨てられていた過去の自分に、再び対面してしまうことだったんだ。
振り返って追い掛けて私が聞きたかったのは、あなたの気持ちですと言ったら彼は何て答えるだろう。
急いで振り返ったけど、彼の後ろ姿はどこにもない。
“待って”と言えば、彼は私を通りすぎなかった?
終電の人波に乗り損ねた私は、静まり返ったホームで一人
「好きです」
届くはずのない、枯れた告白を呟いた。
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過去の記憶がお前に喜びを与えるときにのみ 過去について考えよ ────オースティン
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年7月14日 17時