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「よかったら皆さんでどうぞ」






事務所に戻って、お土産を掲げて告げたら、フロアのみんなからのお礼が飛び交った。






「どこ行ったの?」






岩田さんがお土産を覗きこむ。






「水族館?どうだった?」






「あのー……サメが凄かったです」







「へぇー!俺も今度行こう」






「誰とですか?」






「え?」






え?とか言いながら春が来たみたいな顔してる。






良いな、どういう関係か明白な相手が居る人は。








「あの泣いた一件はどうなった?」






岩田さんが小さな声で訊ねながら、会議スペースを指差した。






「あれ、覚えてたらしくて」






「あー、やっぱり」






二つ並んだ椅子を見たら、此処で嗚咽を漏らした日が遠い昔に感じた。






「やっぱり!?」








「そんなさぁ、記憶飛ぶ位酔っててさぁ出来るわけないじゃん」







「それもうちょっと早く言ってもらいたかったです……」







「………相手、隆二さんでしょ?」






「………違いますよ」






「だって絶対そうだもん」






「だって絶対違うんだもん」






「じゃあ隆二さんに今すぐ此処で相談してみてよ。犬に噛まれて泣いた話」






「………嫌です」






勝ち誇ったような岩田さん。






「何で臣さんは全部知ってんの?俺だけ仲間外れ?」






「臣さんが送れって言ったから今こんな事になってるんです」






「主犯格じゃん。まぁこうなるとは思ってなかっただろうけど。で?好きとか言った?」






「言う予定もないです……」






今なら、このポジションで側に居ることが出来る。







物凄く曖昧で良くない関係なのは分かってるけど。






「好きです」なんて言ってフラれたら、それも叶わなくなる。






もし付き合えるようになったら?






上手く行けば幸せだろうなと思う。






でも、別れてしまったら友達でも仕事仲間でもなく、他人になるしかない。






彼の横にも、後ろにも居ることが出来ない他人。







それは、とても辛い。

3→←哀。



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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年7月14日 17時

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