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ピタッと立ち止まった彼の元へ、ちょっとだけゆっくり歩いて行って隣に並んだ。
暗い夜道。
「どうしよっか?」
「どうしましょう。あ、でも東京には入れると思うんですよねー。そこから車拾いましょう」
「そうしましょう」
静かな電車の中。駅について扉が開く度に人より静寂が乗り込んでくる。
腕から微かに伝わる彼の体温が心地よくて“少しだけ”と目を閉じた。
今日はちょっと疲れたなぁ。
今市さんは、突き飛ばす割には転ぶ寸前で受け止めるんだなぁ………よく分からない人……
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「もうすぐ着くよ」
その声に目が覚めて最初に視界に入ってきたのは、向かいの車窓に映った今市さんの肩に頭を預けた私の姿。
「肩痛いなぁ」
これじゃ立場逆転だ。私も彼の目を見つめて「あぁ、そっか」って言えば良いのかな。
もうちょっとだけ肩借りてようかな
そんなことを考えてるうちに電車が減速して
ホームに滑り込む直前、彼の顔が近付いてきて、その唇が私に落とされる………
と思って息を飲んだけど
「この体勢、しにくい」と言って彼は笑い出した。
私は座席からずり落ちそうになりながら、ぎこちない笑みを浮かべるしかなかった。
「Aと俺の家どれくらい近いの?」
電車からタクシーへ居場所を移した私たち。
「徒歩10分くらいです」
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年7月14日 17時