感情動物。 (ページ17)

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「サメしか観れなかった……」

背後で流れる閉館のアナウンスを聞きながら水族館をあとにする。

「サメも大して観てなかったくせに」

「観てましたよ、ちゃんと」

あなたの顔。

「あー、海行けるんじゃん、この道」

居ないみたいな扱いに慣れてきた私は黙って彼のあとを付いていく。

階段を降りればすぐに砂浜で、目の前には穏やかな海。

「久しぶりに来ました、海」

「そうなの？」

「あれ？最近来たんですか？」

「うん。デートしに」

え、デートって言った？海鳴りかな？

「嘘。びっくりした？」

「びっくりって言うか……」

一瞬、夕陽に向かって叫んでみようかと思いました。

急に疲れて座り込んだ私の隣に、やっぱり手のひら一つ分空けて彼が座った。

水平線に太陽が沈んでいく。

「あ！今市さん、どこの香水ですかそれ」

「えー……内緒」

「気になるんですけど」

「気にしてて良いよ」

突き飛ばし方が激しくないですか？

結構、痛いです。

名残惜しそうな太陽が海に茜色を撒き散らす。