感情動物。 (ページ15)

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温。ページ15

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「もうすぐ着きますよ」

声をかけたら、ゆっくり目を開いて私の目を見つめたまま5秒程の沈黙の後

「あ、そっか……」

と彼は呟いた。

1時間近く人の肩に甘えといて“あ、そっか。二人で電車乗ってたんだっけ”みたいなその態度、何だよ。

「んーー！」

電車を降りて彼は伸びをした。

裾からチラッと覗いた腹筋が彼の体温を思い出させる。

やっぱり私の5歩先を歩いてるし。

今市さんを越えた風は、少しの潮の香りを含んでいて心地よかった。

「ねぇ、あれ？」

殺風景な中に一際目立つ建物。

「あれです！」

着くまでの間、結局二人の距離は縮まらなかった。

人もまばらな館内は貸しきりかと錯覚するほど静まり返っている。

「じゃあね」

「え！？」

「現地までじゃなかったっけ？」

え？あれ？そんな流れだったっけ？別々に観て、別々に帰る話になったんだっけ？

「一緒に観たい？」

え、そんな真顔で……まじで私と観る気ないんじゃ……。

「え……っと」

「5、4、3、2」

「観たいです！」

カウントダウンしてるけど実質与えられてる猶予は2秒もなかった。

「じゃあ行こ」