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先生が呼んでるんじゃなかったの、と聞こうとすると
いたずらっ子のような笑みを浮かべる彼女。
「ふふ、さっきの、嘘やねん。先生が探しとるっちゅうやつ」
「...嘘??」
「おん。...赤石さんが囲まれとんのみて、やばい思て咄嗟に嘘ついてもた。余計なお世話やったら、堪忍な」
「余計なお世話なんて、そんな...でも、なんで」
なんで、こんな卑怯者を。
現実に目を向けずに逃げ続ける、臆病者を。
「昨日のことなら、気にすることあらへんよ」
「...!でも、豊川さん...」
「あぁ...スズはな、ちょこっとアツいとこあるけど、ええ子やねん。
...あの子は、赤石さんにほんまに、憧れとったからなぁ」
「え...憧れ、てた?」
「憧れっちゅうか、なんて言うんやろ、目標みたいな感じやな。
『あの子のサーブ、いつか完璧にあげたる!』言うて、毎日練習しとったんよ...まるで恋でもしとるみたいに、あんたのこと追いかけとった」
── あぁ、知ってる、その感じ。
あの頃の私も、きっとそんな風だったから。
宮侑みたいなプレーがしたくて、あんなすごいセッターになりたくて、練習して練習して、また練習して...
「ま、私にはあんま関係ないけどな!赤石さんがバレーやるもやらんのも自由やし」
「...へ?」
予想もしていなかった言葉に、ひどく気の抜けた声が出た。
あれ、この子、昨日バレー部入らないかって誘ってこなかったっけ。
「あ、別にあんたのこと諦めたわけやないよ、選手として興味あるもん。
でも、それだけやないやんか」
「? どういうこと...」
「私は『バレーボール選手としての赤石A』やのうて、赤石Aっちゅう一人の人間に興味がある...って言ったらわかる?」
「...!!」
目の前の彼女は、いたずらっ子のような笑みから、向日葵のような明るい笑みに変わっていた。
真夏の太陽に向かって、誇り高くまっすぐに咲く
精一杯の陽射しを浴びたその華は、今度はこちらを向いて私の心を照らし始めた。
「私は、バレーとかそういうんなしに、クラスメイトとして赤石さんと仲良うなりたい。...て、あかんかな?」
あぁ、眩しい。眩しくて、暖かい。
...それなのに、私の中の雨雲はそれを受け入れることはなく。
「うん、私も小牧さんと仲良くなりたい。これから、よろしくね」
テンプレートのような文章を並べながら、いつもの笑顔をつくった。
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作者(プロフ) - 華夏さん» コメントありがとうございます。嬉しいです!のろのろ更新ですが...頑張らせていただきます。(^^) (2021年11月2日 23時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 怜さん» コメントありがとうございます。作者にとってはとても嬉しい言葉です。お待たせしてしまって申し訳ないです...頑張らせていただきますね(*^^)v (2021年11月2日 23時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
華夏(プロフ) - これからも更新頑張ってください!! (2021年11月2日 22時) (レス) id: 4bbf064d28 (このIDを非表示/違反報告)
怜 - 好きです((((更新をください← (語彙力捨てた人) (2021年10月30日 20時) (レス) @page41 id: 2ad41d25ee (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - naonaoさん» コメントありがとうございます。頑張らせていただきますね!(^^) (2021年10月26日 7時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2021年8月1日 23時