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「...ははっ、馬鹿らしい...惨めなだけじゃん、帰ろっと」
自嘲気味に笑いながら、もう少し見ていたい、という心の声を押さえつけて歩き出す。
と、角から現れたなにがか、私の視界を埋めつくした。
「え、あだっ...?!」
「うおっ...!」
聞こえた自分以外の声と鼻に生じた痛みで、誰かにぶつかったのだと理解する。
が、変な風にバランスを崩してしまったためか、身体が後ろに傾いていく感覚がした。
...あ、やばい、倒れるこれ。
「あ、ぶなっ...!」
ぐいっ、と腕を強く引かれ、誰かの胸元にぽすっ、とおさまる形になる。
「あ、ありがとうございま...!」
どうにか倒れずに済んだ、と顔をあげると、
「み、宮...」
「あ、朝の、」
私が待っていた男の、片割れがそこにいた。
目の前の、硬い胸板。
スポーツTシャツと、少しの汗のにおい。
悔しいくらいに整った顔。
そして少し筋肉質なたくましい手が、私の腕をつかみ、背中にも触れている。
...ん?
腕と、背中に、手が。
顔も、近い...
「...っ! あ、あの、ちょっと、離してもらっても...」
「ん、あぁ、すまん。汗臭いよな」
「い、いや、そういうわけではなく!」
...宮治に抱きしめられているかのような構図になっていることに気づいた瞬間、恥ずかしさでぶわっと身体が熱くなった。
すぐに離してもらったものの、まだ心拍数はあがっていて。
「ありがとね、倒れるところだった。ぶつかってごめんね」
少しほぐれかけた頬をまたあげて、笑顔をつくる。
別に、俺もすまんかったな、と謝る彼は、本当にあの金髪ナルシストと同じDNAなのだろうか。
「今から帰るとこやったん?遅ない?」
「あ〜...もう1人の宮くんに学校案内してもらう約束で待ってたんだけど...部活行ってる感じ?」
「...あのポンコツ。ちょお待っとって、呼んでくるわ」
「あ、いや、大丈夫!宮くんもたぶん、どっちかっていうとしたくないと思うから」
あのナルシストと2人で学校回るなんてごめんだし、と心の中で呟く。
何かを察したのか、頭をポリポリとかいてため息を吐く宮治。
「なんか...朝も今も、ツムがすまんなぁ。代わりに謝っとくわ」
ツム、というのはきっと金髪のことだろう。
こうやって他人を気遣えるところとか...やっぱり、似てないな。
「あは、大丈夫。...宮くんは、なんで校舎に来たの?なんか用事?」
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作者(プロフ) - 華夏さん» コメントありがとうございます。嬉しいです!のろのろ更新ですが...頑張らせていただきます。(^^) (2021年11月2日 23時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - 怜さん» コメントありがとうございます。作者にとってはとても嬉しい言葉です。お待たせしてしまって申し訳ないです...頑張らせていただきますね(*^^)v (2021年11月2日 23時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
華夏(プロフ) - これからも更新頑張ってください!! (2021年11月2日 22時) (レス) id: 4bbf064d28 (このIDを非表示/違反報告)
怜 - 好きです((((更新をください← (語彙力捨てた人) (2021年10月30日 20時) (レス) @page41 id: 2ad41d25ee (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - naonaoさん» コメントありがとうございます。頑張らせていただきますね!(^^) (2021年10月26日 7時) (レス) id: ed687f0afb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者 | 作成日時:2021年8月1日 23時