episode 3-13 ページ9
グリファスside
ラウンジから出た後は特に追っ手が来ることもなく、無事にオクタヴィネル寮から逃げることができた。
「はぁ……お前、喧嘩強いじゃねぇか。魔法が封じられたらどうこう言ってたのはどの口だ」
『ン〜、護身術は膂力とは関係ありませんので』
「いや、契約書をスろうとしたあの動きは護身術の範疇じゃねぇだろ」
『身体は小さい方が小回りが効くものです』
「そういうレベルじゃねぇだろアレは……」
嵌められた、と言わんばかりにジャックは眉間に手を当てて首を振った。こうして外見で騙すことができるのが出来るのが小柄な姿の利点である。取り分け彼のような根の真面目な相手には良く効く。
「チッ……首を突っ込んじまったもんはしょうがねぇ。それに、あの卑怯者を一度ぶっ飛ばさないと気がすまねぇ」
『それにはあの魔法の攻略が必要になりますね』
「そうだな。何処かで作戦会議を……」
『でしたら、ワタクシの寮にいらっしゃってください。大したおもてなしは出来ませんが』
単純に盗み聞きされる心配が無いからである。眷属たちに監視させておけば、仮に魔法で盗聴されていても直ぐに対処してくれるはずだ。
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談話室のソファに向かい合って腰掛ける。此方がお茶を汲んでいる間、ジャックは腕を組んで何やら考え込んでいる様子であった。
「頭にイソギンチャクを付けられた奴らは、テストで良い点を取るためにアズールと契約してまんまと騙された……っことで間違いなさそうだな」
『アーシェングロット先輩の話からしてそうでしょうね。上位50位以内に入ることが条件だったようですが……』
「あれだけ大量の生徒と契約していれば、殆どの契約者が上位50位からあぶれることになる。最初からアズールはそれを狙ってたってことか」
『悪どいやり方ですが、契約のルールには反していませんからね。追及するのは困難です』
ジャックは突然毛を逆立てて、ばん、と自身の膝を叩いた。
「ったく! 他人の力で良い成績取っても何の意味もねぇだろ。自分の力を示せる機会を棒に振るなんざ、それこそバカだ」
ヒートアップする彼を適当に流しつつ、ティーカップをもう一つ転移魔法で取り寄せる。新たな客人のようだ。あと数秒もすればジャックの後ろに降り立つだろう。神出鬼没なのは結構だが、人の住処に勝手に入り込むのはそれなりの立場の人間として如何なものか。
そう、客人とはクロウリーのことである。
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作者名:カガチ | 作成日時:2022年12月9日 4時