episode 3-10 ページ6
グリファスside
「二人とも、僕たちを助けに来てくれたのか！？」
顔を輝かせるデュースに対してもジャックは牙を剥いた。
「勘違いすんなよ。俺はここにいる全員が気に入らねぇんだ。アコギな取引を持ちかけたヤツも、他人を頼ったお前らも、どっちの味方をするつもりもねぇ！」
「お前、何しに来たの？」
『ワタクシが誘ったのですがねェ。あァ、ワタクシは今すぐ帰っても構いませんよ？』
「いや、お前も何しに来たの？」
二人の──ほぼ一人がやったことだが──乱入者が出たことによって、アズールに支配されていた場が一気に乱れた。今まで黙っていた者たちも騒がしくなり始める。
「いや、そいつの言葉で目が覚めた！ やるなら実力で勝負だよな！」
「あいつから��実力��行使で契約書を奪い取るぞ！」
「皆で囲め！」
何とも見下げた根性である。悪魔との契約に対して「騙された」だの「嘘つき」だの書き散らして後世に残したのもこういう人間共だったに違いない。
「やれやれ……あまり手荒な真似はしたくないんですがね」
大勢に囲まれてなおアズールは余裕綽々といった様子だ。眼鏡を指で押し上げ、口角を上げる。
「ジェイド、フロイド、少し遊んであげなさい」
ぎぃ、と蝶番が軋む。スタッフルームの扉が開いたのだ。ぬぅ、と扉の奥から大きな人影が二つ現れた。一人は寮服のスーツを微塵の乱れもなく着こなしているかと思えば、もう一人は大胆に着崩している。二人で左右対称になるオッドアイとメッシュの髪。その特徴的な見た目から生徒名簿の記憶も直ぐに浮かんでくる。
彼らはジェイド・リーチとフロイド・リーチ。寮長であるアズールと行動を共にする……用心棒であり、両腕。その正体はウツボの人魚の双子であるらしい。
「かしこまりました」
「コイツら全員絞めていいの？ あはっ、やった〜」
ジェイドとフロイドが悠々と迫ってくる。シルエットからも分かる事だが、近づかれるとその長身さが際立つ。変化していない自分と同じか少し低いくらい……190cm以上といったところか。
「なんだコイツら！？ デケェ……！」
「怯むな！ かかれ！」
生徒たちが揃ってマジカルペンを構えた。魔法を使った私闘は禁止されているはずなのだが……この校則がまともに機能しているところを見たことがない。騒ぎを受けては止めに入らなければならないクロウリーの日頃の苦労が窺い知れる。……この場の争いを彼の代わりに止めてやるような同情はしないが。
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作者名：カガチ | 作成日時：2022年12月9日 4時
