episode 3-23 ページ19
グリファスside
「あんな契約をするなんて……お前まであぁなったらどうするつもりだ」
部屋を出た途端に、ジャックが呆れた様子で問う。
『心配ご無用です。負ける道理が御座いませんので』
「本当に大丈夫なんだろうな？ 勝手に寮まで担保にしてたじゃねぇか」
『あの位出しておいた方が、あの様な方には��効く��んですよ。どうせ奪われないのなら、何とでも申し上げられるものですし』
実際、仮に契約違反をしたとしてもグリファスから何かが奪われることはない。こちらが契約書に書いた名前は「マルム・ラルヴァ」であって、「グリファス」ではない。契約とは名前に結びつくものであり、真名を掴んでいないのなら、それはこちらから何かを奪う効果を持たない。
「その余裕は何処から来てるんだか……とにかく、制限時間がある以上はさっさと動かねぇとな。明日の朝、鏡舎で集合だ」
『えェ。手早く済ませましょう』
「俺はこのまま寮に帰るが……お前はどうするんだ？ 寮は担保に取られてるだろ」
『おや、寝泊まりの心配をなさっているのですね。構いませよ。行く宛ては御座いますから』
「そうか。なら良いが……気をつけろよ？ 奴らがどんな妨害を仕込んでくるか分からねぇ」
『はい。そちらもお気を付けて』
ジャックと別れ、鏡舎から出る。辺りは闇に包まれ、一面に広がる夜空に星が瞬いていた。ばさりと羽を広げて地面を蹴る。この時間ならば、箒無しで飛んでいても見つかりはしないはずだ。
『おや、あれは……』
寮の入口に誰かが立っている。似通った大きな二つの人影……リーチ兄弟だ。降り立つために高度を下げていたのをやめ、滞空して彼らの動向を観察する。寮の扉には鍵がかかっていないため、二人はそのまま中へと入っていく。
『随分と差し押さえが早くていらっしゃる。余程欲しいのですねェ、あれが』
寮に控えていた眷属の一体と接続し、眷属を通して彼らの会話が聞き取れるようにする。侵入者がいた場合は姿を隠すように命令してあるので、見つかりはしないだろう。
「これは素晴らしい、本当に新築同然です。ここならば、正しくモストロ・ラウンジの2号店に相応しい」
「ここ、ゴーストが住んでるんでしょ？ 面白そうでいいな〜」
などと、部屋の間取りなどを確認しながら駄弁っている。その間に、寮にいた眷属達は顕現を解いた上でこちらに呼び戻しておいた。
『さァて、今日の夜は如何過ごしましょうか……』
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作者名：カガチ | 作成日時：2022年12月9日 4時
