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episode 3-22 ページ18

グリファスside

「俺たちに美術品を盗んで来いって言うのか!?」

すかさずジャックが身を乗り出す。正義感の強い彼は、盗人の真似など自身のプライドが許さないだろう。

「いいえ、美術品ではありません。取ってきてほしいのは、10年前撮影された、リエーレ王子の来館記念写真です」

アズール曰く、入口近くに飾ってあるだけの、歴史的価値のない写真らしい。

『ワタクシは一向に構いませんが……なぜ、そのようなものを? 何かその写真を欲しい理由が?』

「……それなりに難題でないと、225人の解放にはつり合わないでしょう?」

『おや、あれ程担保を差し出してもなお、まだ足りないと仰る』

「この条件が呑めないのなら、今すぐこの話は無かったことにしますよ」

『いえいえ、滅相も御座いません。このチャンス、ありがたく頂戴致しますとも』

「ならば、この契約書にサインを」

アズールは何処からともなく金色に光る契約書を取り出した。一見豪華なだけの紙に見えるが、魔力で編まれている。ユニーク魔法の類だろう。横に置かれた羽根ペンを手に取り、さらさらと名前をしたためる。

「ふふふ……確かに頂戴しました。これで契約成立です。3日後の日没までに、写真を奪い僕の元に持って来ることができれば、僕の下僕である225名のイソギンチャクたちの自由を約束しましょう」

『そして、契約違反の際には、担保が全てあなたのものになる』

「その通りです。あぁ、言い忘れておりました。あなた達にはこちらを差し上げます」

机の上に置かれたのは、蛍光色に発光する緑の液体が入った瓶。ほのかに香る魔力が、それが魔法薬であることを示している。

「水中呼吸の魔法薬です。あなた達は海の中で息など出来ないでしょう?」

『おや、宜しいのです? 流石、慈悲の精神に基づく寮の長でいらっしゃる』

「はは、礼には及びませんよ。さぁジェイド、フロイド、お客様の見送りを」

アズールは椅子から立ち上がり、恭しく頭を下げた。扉を開きながらフロイドが呟く。

「アトランティカ記念博物館かぁ。そーいえば、オレたちもエレメンタリースクールの遠足で行ったっけ」

彼らがエレメンタリースクールの時ならば、ちょうど10年程前だろう。なるほど、どうやら件の写真はこちらの「契約」の鍵​​──彼の弱点に成り得るものだ。イソギンチャク共の解放なんぞに興味はないが、その写真は是非とも欲しい。「契約」ならばこちらが上手だと、示してやろうではないか。

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作者名:カガチ | 作成日時:2022年12月9日 4時

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