episode 3-20 ページ16
グリファスside
こと、とテーブルにドリンクが置かれる。否、ドリンクだけが浮遊してテーブルに独りでに着地したのだ。
『さて、これで現在のお客様の注文には全て対応致しましたね』
「ほぼ全部マルムがやってくれたな……申し訳ない」
『オーダー表に書かれたものと商品を結びつけて
「その��だけ��のやり方が分かればな〜オレも楽できるんだけど」
「へぇ〜シャチちゃん結構やるじゃん」
「まさか、ホールとキッチンの仕事を同時にするとは」
背後からリーチ兄弟がぬっ、と顔を覗かせる。ホール業務が瞬く間に片付いていくのを見て、彼らは更なる仕事を押し付けてきたのだ。
『フードやドリンクの制作も、オーダー表との魔力的紐付けで動かせますからねェ』
客足も落ち着き、そんな会話を交わす余裕も出てきた。そろそろここに来た目的の人物も現れる頃だろう。案の定、パチパチと手を打つ音が聞こえてきた。
「素晴らしい。あれだけの混雑を捌き切るとは、見事なヘルプです」
振り返れば、そこにはアズールが満面の笑みを貼り付けて立っていた。すぐさまジャックが掴みかからんばかりに毛を逆立てる。
「大変お待たせ致しました。VIPルームの用意が出来ましたので、どうぞこちらへ」
激しく威嚇するジャックを気にも留めず、アズールはラウンジの奥にある扉を手で示す。分厚く重たげな扉を、左右に控えていたリーチ兄弟が開いた。
壁一面が本棚になっており、法律や契約、経営に関する本が几帳面に並べられている。部屋の中央には、ガラスのテーブルを挟んで向き合うように並べられた革製の長椅子が2つ。そして何より目を引くのは、洒落た部屋からは浮いて見える無骨な金庫。
「なんだここ……本当に学園内か？ デカい金庫があって……銀行みてぇだ」
「さぁ、突っ立って入口を塞いでいないで、奥へどうぞ」
アズールが長椅子の一つにこちらを誘導する。腰をかけてみると、柔らかく体が沈み込む。上等な椅子を使っているようだ。
アズールが反対側の椅子に座る。彼はリーチ兄弟がテーブルにお茶を出したのを確認し、にやりと笑って話し始めた。
「それで？ 僕に相談というのは？」
『我々の望みは一つ。あの哀れなイソギンチャク達を解放していただきたいのです』
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作者名：カガチ | 作成日時：2022年12月9日 4時
