episode 3-18 ページ14
グリファスside
腕時計の針は九時を指している。指定された時刻だ。隣には「お前までイソギンチャクにされたら困る」と言って着いてきたジャック。二人揃ってモストロ・ラウンジの扉の前に立っていた。
『参りましょうか』
「一回入ったことがあるとはいえ、敵の縄張りだ。気引き締めていくぞ」
重厚感のある扉を押し上げると、からん、と内側に着いていたベルが鳴った。ジャズ調の音楽と客の笑い声が混ざりあっている。開店前とはまた違った雰囲気だ。
『賑わっているようですね』
「あー、シャチちゃんとウニちゃん。いらっしゃ〜い」
「��ウニちゃん��って……もしかして俺か？」
「そう。だって、髪の毛がツンツンしててウニみたいだし」
「なっ……俺はオオカミだ！」
どうもフロイドは海の生き物になぞらえてあだ名を付けているらしい。エースとデュースがそれぞれ「カニ」と「サバ」と呼ばれていることを二人から聞いた。
「おや……これはこれは。早速のご来店ありがとうございます。ようこそ、��モストロ・ラウンジ��へ」
続いてジェイドも現れた。店員としての仕草が板についており、恭しく頭を下げてくる。
「当店の御利用は初めてでいらっしゃいますね？」
『えェ。此処での勝手を存じ上げておりませんから、ご説明頂きたいです』
「では、僭越ながら当店をご利用いただく為の諸注意をご説明いたします。��モストロ・ラウンジ��は紳士の社交場ですから、他寮との揉め事はお法度です。故に、どの生徒もオクタヴィネル寮のルールに従って頂きます」
『簡潔で素晴らしいルールですねェ。承知致しました』
此方が頷くと、ジェイドは姿勢を正した。胸に手を当て、態とらしく微笑む。
「さて、……お客様、本日のご要件は？」
『ここの支配人に御相談があります。お会いさせて頂きたく、参りました』
「ふふふ……かしこまりました。今、支配人は別のお客様のご相談を受けておりまして。しばらく店内でお待ちいただけますか？ 先程申し忘れておりましたが、当店はワンドリンク制です。必ず何か一杯ご注文くださいね」
そう言って空いている席に案内される。メニュー表を手渡された。この時間を指定してきたのは其方なのに待たせるのか、と言いたくなるが、今波風を立てても無駄なだけだ。
「イソギンチャクさん、こちらオーダーお願いします」
ジェイドが手を叩く。手袋をしているため音は鳴らないが、店の奥から店員……エースとデュースがやってきた。
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作者名：カガチ | 作成日時：2022年12月9日 4時
