影踏み沈む【呪術廻戦】【男主】

プロローグ ページ2

目線無し


"それ"は、今日も見つめる。

真っ黒な水中、その向こう側を眺める。

向こう側にいる彼に、"悪いもの"が寄り付かないように。

彼が"悪いもの"に溺れないように。

気づかれないよう、細心の注意をはらって。

握って、縛って、祓う。

その繰り返し。


本来、人間に対して何の感情も持たない"それ"が何故、ここまで執着するのか。

どれだけ人間に似せようとも、決して人間に成れない"それ"が、何故人間を真似ているのか。

理由はひとつ。

彼を気に入ったから。

彼は与えられる"不平等"に怒り、悲しみながらも、その"不平等"に抗い、少しでも"平等"であるように行動する。

その信念を気に入った"それ"は、彼を勝手に庇護下に入れた。

とはいえ、彼が"それ"の姿から誤解を招き戦闘に発展しないとは限らない。

ゆえに、"それ"は人間を真似た。

例えば"それ"が持つ圧倒的な呪力。

例えば"それ"の人間とは似ても似つかない姿。

それらを人間に近づけ、"人"になった。


まだ名も無い"それ"は、今日も見守る。

彼が寿命で死ぬ、その時まで。

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