赤井秀一さんと住んでみる3【沖矢昴】

139.機内の男【過去編】 ページ42

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Aside


ー10年前ー


日本にはお盆という先祖を迎える季節があるらしい。

だから私は日本にある父方の祖父母のお墓参りに行った。

去年母が失踪して、友達もいなくなり、寂しかった。


祖父母の家はもうないけど、両親なら、
お墓に何か失踪の手掛かりを残しているかもしれないと、そう思ったのに…


何も得られなかった。



他に親戚もいない、友達も、頼れる大人もいない。
失踪の手掛かりも無くて…天涯孤独になった。




？「…泣いているのか？」



そう話しかけてきたのはアメリカへ帰る飛行機で
隣に座った若い男の人。



『…そう見えますか？』



秀一「…失礼。泣いているように見えたんでね。
…親は一緒じゃないのか？」



『…両親共に失踪中なので。
それと、私こう見えて20歳だから。』



秀一「…ほぉー。奇遇だな。
俺の父親の方も行方がわからなくなっているんだ。
7年程前からね。」



『え？』



秀一「…どうした？」



『私の父も、7年前から行方不明なの。
母は、違うけど。』



秀一「…話を聞かせてくれないか？
俺たちの母国に到着するまであと7時間もあるからな。」



『…俺たちの母国って、私が日本人だとは思わないの？』



秀一「そのパスポートはアメリカ合衆国のものだろ。」



『…あ。』



秀一「さらに言えば君は墓参りの帰りだ。
親戚の家に行っていたにしては荷物も少なすぎるし、
さっきの表情の説明もつかない。

それと、日本には盆という墓参りに適した時期があるらしい。今がちょうどその時期だ。」




『…すごい！お兄さん探偵か何か？」




秀一「……君は笑顔が綺麗だな。

俺はただのアメリカの留学生だよ。
…話は逸れたが、先程の続きを聞かせてくれ。」




自分でも気づかないうちに笑顔になっていたらしい。

それから国に着くまで機内が消灯してからも、
ずっと話し続けた。

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それから空港に着き、別れのときが来る。



秀一「…君は案外頑固だな。
最後に名前くらい教えてくれてもいいものを。」



『…その方があなたの為なの。
私だってお兄さんの名前、聞かなかったでしょ？』



秀一「…そうか。…じゃあ、そろそろ行くが……」



気づくと自分ではもう止められない程の涙があふれてくる。

この男と離れるのが辛いからなのか、
それとも、これからまた独りきりで
生きていかなければならない不安からなのか、

わからない。



秀一「…やっぱりもう少し君と一緒に過ごしたいんだが、君は？」


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