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誠とアズサは紅いカーペットが敷かれている、質素な廊下を歩いた。
何度も渡り歩いてきた廊下だというのに、今日限りでお別れになってしまうかもしれないという行き場のない気持ちが、アズサの心に響いている。
東雲家の三十七代目当主として、本当にこの地を捨てるのは正解なのかと不安の気持ちが募っていく。
妖としてはまだ半人前のアズサ一人が、この屋敷をまとめ上げたのだ。
誠は、アズサの不安な気持ちを微塵も知らない。
誠は、ある不安に脳内を支配されていた。
「行きましょう」の言葉以降、もうかれこれ五分は会話が行われていない。誠は気まずくなり、額に冷汗を浮かべた。
誠の頭の中では、自分より身分の高い令嬢に殆ど要件なしで話しかけてもよいのだろうかと試行錯誤している。
「……アズサお嬢様」
冷汗を顔に浮かべたまま、誠はアズサに話しかけた。声が若干上ずっている。
アズサは誠の感情を読み取ったのか、小さく溜息を吐いた。誠はアズサの溜息に驚いて小さく肩をはねた。
「何かしら?用件は手短にね」
アズサは遠くの一点しか視界に映していない。
口から吐き出された、生温いアズサの言葉が、長い廊下に反響していく。
誠はおずおずと口を開いた。
「……このまま、どうなってしまうのでしょうか。妖は、人間に気付かれないように共存してきました。しかし今回人間による自然破壊が行われたことによって、妖の一部は絶滅してしまうかもしれません」
不安な口ぶりだった。
「それでも」
「……」
アズサが立ち止まりながら言った。
誠は、視界いっぱいにアズサを映した。

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赤菊 藍(プロフ) - 旅人さん» そのような評価を頂き光栄です。この作品は色々と自分の可能性を広げようと試行錯誤しているものなので、やや更新頻度が遅めですが温かく見守っていただければ幸いです。素敵な感想ありがとうございました。 (1月13日 8時) (レス) id: cc808b1622 (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - 描写がはっきりとしていてとても読みやすいです…!更新楽しみにしています! (1月13日 1時) (レス) id: ec476d732d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤菊 藍 | 作成日時:2019年1月1日 1時