14.意志 ページ18
「オビさん…」
風のようにどこから現れた彼はその月光で輝く琥珀色の瞳をこちらに向けていた。
「大丈夫かい？A嬢。その足、かなり酷いだろ。お嬢さんに診てもらった…」
「オビさん。」
「…ん？なんだい？」
…彼は優しい。こんな私のことを心配してくれている。…でもこれだけは譲れない。何としても。
「どいてください。」
え？
私の言葉に間の抜けた声を出して驚く彼に、私はもう一度同じ事を言う。
そして、彼の足元を指して、そこから。と。
すると、彼は頷き、その場から私の方へ来る。
すみません。有難うございます。
彼の目を見ずにそう言えば、彼はまだ動揺を残した声で、うん。と言った。
その言葉を聴き、私はオビさんが立っていた…私の足を掴んだ男性が倒れている場所へ歩み寄って軽く肩を揺らす。
おーい？おーい？
声をかけても微動だにしない男性。怪我は…ないな。私が蹴ったり、オビさんが落ちてきた時の痣はあるけど…脈もある…生きてる。
はあ…安堵の溜息を溢した私に、様子を見ていたオビさんが、あのさ、と話を切り出した。
「…なんで、そいつの安否なんて確認したの？」
そいつ、とはこの男性のことだろうか。
一度男性に視線を向け、オビさんの方に視線を戻して…驚いた。
彼の表情は私には読み取るのが不可能なくらい、複雑に感情が入り混ざった顔をしていて、だけど琥珀色は優しい光を帯びていて…言葉を続ける彼に私の反応は遅れていた。
「そいつはアンタを傷つけようとした相手だ。なんで…そんなこと…。」
「自己満足のためです。」
微笑みながらそう言った。そんな私にオビさんは驚いている。普通は驚く。なんで笑ってるんだろうか…笑う場面ではないのに…でも、何故か可笑しかったのだ。余裕ぶっていて、飄々とした年下らしくない年下の彼の余裕のない姿が。
「…自己満足…？」
「そうです。…傷つけたくない、殺したくない。生きているうちに誰かを傷付けてしまうのは仕方がない事なのに…傷付いているのを見たくないんです。」
その為になら、自分の身すらも容易く捨てられます。
最後に微笑んだ私に、彼は、危ないな。そう小さく呟いた。
ふと、体が宙に浮く感覚に襲われる。耳の奥では、何かを叫んでいる彼の声。
『逃げて』
『逃げてっ！』
ー傷つけたくない、殺したくないー
きっと、こんな事を思い始めたのはあの時からだ。
目に焼きつくような赤と、耳にこびりついた…叫ぶ声。
あの記憶は…今も鮮明に思い出せる。
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尻尾 - シラさん» 了解しました！(^^)ありがとうございます(*^^*) (2017年5月22日 15時) (
レス) id: bb97fb99a6 (このIDを非表示/違反報告)
シラ - そうですね。よろしくお願いします！ (2017年5月14日 14時) (レス) id: a9b6bb5114 (このIDを非表示/違反報告)
尻尾 - シラさん» ありがとうございます！…取られそう、って言うのは恋愛的にですか？ (2017年5月14日 14時) (レス) id: bb97fb99a6 (このIDを非表示/違反報告)
シラ - そうですね… イザナに取られそうになる夢主をオビが守るっていうのはどうでしょう？ (2017年5月13日 21時) (レス) id: a9b6bb5114 (このIDを非表示/違反報告)
尻尾 - シラさん» ありがとうございます！できれば、リクエストなどもお願いします(^^) (2017年5月13日 8時) (レス) id: b6819af603 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：尻尾 | 作成日時：2017年3月31日 16時
